ライト兄弟が飛行機を開発するときに一番苦労したのが「いかにバランスを崩すか」だった、という話を聞いたことがある。
バランスを取ると試作機は浮遊しない、かといってバランスを大きくくずすと浮遊しても、すぐ墜落する。
この話は「経営」にも通ずるところがある。
私も含めて、多くの会計事務所や中小企業の経営がスモールビジネス(これを生業ともいう)の域を出ないのは、ある程度の規模になると、資金繰りや人員のバランスが崩れることを恐れて消極経営になってしまうためだ。
大きくするには運転資金が必要になる。でも借入を増やしてまで規模拡大をするのは不安だ。
規模拡大をするには「人」と「権限委譲」が必要になる。でも権限を委譲できる人を採用する自信がない。実際に実務経験の豊富な優秀な人は大手を指向する。
ソフトバンクの孫さんみたいな人は、「特別変異」のような気がする。いつもいつも極限まで資金調達をして、それをすべて使い果たすように事業を拡大する。
常人には無理な話で「おできと中小企業は大きくすると潰れる」というのも、また真実だ。
じゃあ、「堅実にやりさえすれば生き残れるのか・・」というと、そうではないところに経営者の悩みがある。
市場はいつか衰退する。会社は常に進化しなければ生き残れない。進化するには規模拡大は欠かせない。ここで多くの経営者は、ジレンマに陥り、どうどう巡りを始める。
京セラの稲盛さんは「中小企業の経営は、経営者の器そのものなのです」という。その通り、一般論でどうにかなるわけじゃない。
「考えに考え抜いて、やれるだけの経営努力をしているか」と絶えず自問自答しながら「誰にも負けない努力をする」しかないらしい。
この努力は禅宗の修行にに通じるところがある。禅宗系の仏教を好む経営者が多いのは、こんなところに理由がありそうだ。
【今回の推薦本】
半藤一利著「日本史はこんなに面白い」
半藤さんは作家であり、「歴史探偵」だそな。半藤さんがその道の碩学(せきがく)達と語る対談集。歴史好きには、興味のつきない企画です。
中西進と語る聖徳太子、井沢元彦と論じる織田信長、そして井上章一と意気投合するヒトラーの圧倒的な存在感。
そして丸谷才一との当意即妙に語り合う昭和史。こういう企画は楽しくて、飽きません。
(このブログは毎週木曜日に更新予定です)
ところで、以前に人参をもらったアッチャンから、こんどはお餅をいただいた。これがまた美味だった(ブログなんかに書かずに礼状を書けよ!)