株式相場を見ていると、分からないことがたくさんあります。税理士は現在の株価が安いか、高いかを考えるときにPBR(1株当たり純資産)で考えます。
PBRとは、単純に表現すると現在の解散価値といえます。税理士だけでなく外資のファンドなども、この数値を重視するようです。将来のことはわからないので信用しない、というのが税理士です。
PBRの次はPER(株価収益率)を参考にします。PERとは株価が当期純利益の何倍になっているか、という指標です。PBRとPERは運用の元本とその利回りの関係にあるといえます。
昔は、PBRは使い物になりませんでした。カネボウや日興証券の事件に代表されるように、粉飾決算が当たり前で資産の実在性に大いに疑問があったからです。純資産がたくさんある会社が、ある日突然債務超過になって倒産するのですから株主はたまったものではありません。
代表的な事件が、日債銀や山一証券の倒産でした。因みに私は日債銀の株券を今でももっています。「投資は慎重にしなさい」と自分を戒めるために大切に保管しています。
一方、歴史のある会社は不動産が大昔の価格で計上されていたりするので、純資産が異常に低く計上されていたりします。PBRが異常に高い場合は、資産の含み益が株価に影響していることが多いようです。
古くは「三菱鉛筆は損益計算書なんか見てはいけない。不動産の含み益で考えるべきだ」なんていわれました。
最近は時価重視の会計基準に変わってきたことや公認会計士の監査がかなり厳しくなっており、貸借対照表が随分信頼できるようになった気がします。もっとも後者の資産の含み益の問題は変わっていないと思います。電鉄株やデベロッパーの株価は表面的なPBRだけでは評価できません。
不思議なのは利益がちゃんと出ていて、PBRも低いのに、株価がさっぱり上がらない株がゴロゴロあることです。いつか上がりそうなものですが、なんかいつまでも低位の株価に貼り付いています。
色々な理由があるのでしょうが、「美人投票」に似ている気がします。つまり人気がないわけです。
もし株価が全て合理的に形成されるとしたら、何の面白みもありません。分からなくて当然、理屈で割り切れないのが株式市場の魅力でもあるわけです。
【今回の推薦本】
「表舞台 裏舞台 福本邦雄回顧録」。福本邦雄さんは、かつて「フクモトイズム」で有名だった共産党の理論的指導者、福本和夫さんの長男で、本人は「政界最後のフィクサー」といわれているそうです。
本人がマスコミに出てくるようになったのは最近のような気がします。安倍晋三のお爺さんである岸信介から現在までの、政界の裏話や人間模様は興味がつきません。
それにしても歴代の総理で去り際鮮やかな人は少なく、大半の方が「矢折れ、刀つきて」無念の内に、政治生活に終わりを告げている気がします。
竹下登さんも次のように、いっていたそうです。
「ともかく誰でも、政権が近づくと、小沢(一郎)でも誰でも、自分から離れていく。自分も、かつて田中角栄に背いたように、自分の『六奉行、七奉行』と言っても、政権が近づいたり、ちょっと偉くなると、必ずそういうふうになる、それでも残るのは、小渕(恵三)と青木(幹雄)ぐらいだ。自分もそうして来たんだから、それはしょうがない」