経済事件とマジックの仕組みは、驚くほど単純なことが多い。
例えばカネボウの粉飾は、毛布を何千億も過大計上するという手口だった。本を読んでいて思わず笑ってしまった。「もう、こうなったら、どーでもいいや。やれやれ!」という感じ。
山一証券は、損が出た有価証券を高値で海外の関係会社に引き取らせて損失を隠蔽した。それで、どうしようもなくなったら「うわ〜、こりゃもう駄目だ。何にも知らない営業部長を社長にして責任をとらせよう」と開き直った。こりゃ、ある意味すごい。あの社長は可哀想だったけど、たしかにいい人だった。
経済事件に巻き込まれた、新興市場のある上場会社の生き残り策は、ありえない多額の第三者割当が実施されたとプレスリリースすることだった。
その手口は、銀行の残高証明書を偽造して、増資額を百倍にして登記してしまったとか。お上に弱く、登記簿謄本を過信してしまう日本人の心理を突いた手口。
憎むべき犯罪かもしれないが。小学生のいたずらにもにて、つい笑ってしまう。流行語は好きくないけど、「まじっすか」って感じ。
あの大西武の生みの親である堤康次郎の相続税の節税策は、社員の名義を勝手に使ってしまうこと。これなんか相当に大胆で、思わず唸ってしまう。
いま思うと、過去のマスコミの西武グループ特集は、なんと空虚だったことか・・。
マイナーなところでは「日本コッパース事件」というのがある。これは1970年代の話。
この事件なんかも手口は単純で、経理部長が会社の定期預金を担保に6億円借り入れて、そのまま横領したというもの。
面白いのは監査法人の監査があったのに、それがばれなかったこと。
会社は監査法人を訴えたのに「監査会社に責任なし」という判決だった。(恐らく今なら監査法人が負けている)
こういう例を多々見ていると、いくら内部統制といっても経済事件はなくなりそうにない気がする。多数の観客がマジシャンにいとも簡単に騙されてしまうように・・。
【今回の推薦本】
田中秀臣著「不謹慎な経済学」
ワイドショー的建前と官僚の情報操作がまかり通る世の中で、本書は経済学を利用してズバッと本質を突いてきます。
とくに「ボランティアを義務化すると、経済格差が拡大する」と「ニート対策は、役人の利権を生むだけ」はなるほどです。
だいたい義務じゃないからボランティア、一見もっともに聞こえる教育論や政策は、よく考えると本末転倒だったり単なる予算確保だったりするのが世の常です。
ね、メタボ診断を義務化した厚生官僚さん!
(このブログは毎週木曜日に更新予定です)