ご存知のように参議院での与野党逆転という背景があるので、今年は無茶な改正はないだろうと思っていましたが、想定通りでした。
2年前のオーナー会社に対する極端な増税の改正など自民党が強すぎると、ここぞとばかりに納税者不利のとんでもない税制が潜んでたりするので、与野党伯仲も悪くないと個人的には思っています。今回の大綱ではオーナー会社に対する税制は継続になりますが民主党の大綱では廃止になっています。この制度は廃止すべきです。
いつの世も批判勢力は必要です。私はこれを「アンチテーゼなきテーゼは独走する」と評しています。もっとも私がいっても、さっぱり重みはありません。
ただ、今回もがっかりする改正がありました。
証券税制を「金融所得の一本化」に向けて次のように改正するそうです。私に言わせると、いたずらに難しくした証券税制の改悪です。改正内容の概要は以下の通りです。
・上場株式等の譲渡所得の税率を現行の10%から平成21年以降は20%にする
・ただし500万円以下の部分については10%の軽減税率にする(2年間)
・源泉徴収口座における源泉徴収税率は10%の軽減税率にする(2年間)
この場合、譲渡所得の金額が500万円を超える人は確定申告が必要
・上場株式等の配当等に係る源泉徴収税率は現行の10%から平成21年以降は20%にする
・ただし2年間は10%の軽減税率(大口株主等を除く)
・上記の場合、上場株式等の配当等(年間1万円以下の銘柄の配当は除く)の金額が100万円を超える人は確定申告が必要
・平成21年以降の配当所得については20%の税率による申告分離課税を選択することができる。なお、総合課税を選択することにより配当控除等の適用も受けることができる。この場合は総合課税と申告分離課税の選択適用
・申告分離課税を選択した場合は、上場株式等の譲渡所得で生じた損失は配当所得から控除する。控除しきれなかった損失は3年間繰りこすことができる
どうです、この複雑さ。税理士に申告を依頼しない一般の方には、とても理解できない改正です。税理士だって、こんな細かい計算、嫌です。
これじゃ一般投資家に対して冷水を浴びせるようなものです。株価にも影響が出るのではないでしょうか。
どうしてもっと簡易にしないのでしょうか。
【今回の推薦本】
ご存知、辻井喬は西武グループの創始者である堤清二さんのペンネームです。
堤さんの感受性と問題意識好きです。若い頃、私の好きだった経営者は中内功さんと堤清二さんでした。ともに流通の世界で業績を急拡大して一世を風靡しましたが、バブル崩壊によって経営者としては失敗してしまいました。
平和主義者で経済界の古い体質を毛嫌いしていたのも共通しています。経営者というよりは中内さんは「革命家」であり、堤さんは「詩人」でした。
「経済よりも大事なものがある」という、強い意志がありました。
税理士という仕事をしていると、創造性や感受性が麻痺していく気がします。
会社の経営をしながら、詩人としての感性を失わなかった堤さんは魅力的です。
でも、あの堤さんももう70才を過ぎたんですね。
(このブログは毎週木曜日に更新予定です)