信託法が85年ぶりに改正されたことは、以前書きました。
日本の信託の歴史が85年もあることに驚いたのですが、信託を勉強してみると、それどころではないことが分かります。
そもそも「信託」の起源は12世紀ごろに十字軍で出征しなければならなくなった兵士が、遠征の際に他人に財産管理を依頼したのが起源という説が有力だそうです。
信託の仕組みが必要になって、もう800年も経つわけです。考えてみると日本の信託の歴史は、まだまだ日が浅く、なじみも薄く、信託の必要性もあまり実感することはありません。
でも信託の起源を考えるとどうでしょう。
「俺も長い長い遠征に出なければいけなくなった。
無事で帰ってこれるかどうかも分からない。
幸い、ある程度の財産はある。
この財産で女房、こどもが将来にわたって幸せに生きていくことはできないだろうか。」
このニーズを現在に置き換えると、次のようなものでしょうか。
「今は元気で仕事もうまくいってる。
貯金もそこそこはある。
でも環境は厳しいし、将来はどうなるか分からない。
子供ももうすぐ、中学生だ。
せめて子供の将来の学費と生活費だけは確保しておきたい。
何かいい仕組みはないだろうか?」
うん、こうして考えると「信託」が身近に感じられるし、勉強してみようという気にもなりますね。
信託も方便(道具)であり、うまく使わなければ意味がないということでしょうか。
【今回の推薦本】
円満字二郎著「心にしみる四字熟語」
書店で題名だけを見て、なんとなく購入しました。
著者の方も知りませんでした。珍しい名字ですね。
意に反して内容は「四字熟語」を通して語る文学論でした。
意に反していたのですが純文学や小説を読まなくなって久しいので、逆に新鮮に感じました。
特に印象に残ったのは「茫然自失」という熟語に関して、著者が取り上げた島崎藤村の『新生』です。
多くの方と同じように藤村と言えば『破戒』や『夜明け前』です。私も高校時代に読みました。
『新生』は、この代表的な2作とはまるっきり異なる、作者が実体験した禁断の愛を書いた「捨て身の告白文学」だそうです。
藤村がこのような作品を残していたのが以外でした。
業のなせるわざでしょうか。
そこまで執筆しなければ救われないのが小説家という人種のような気がします。
(このブログは毎週木曜日に更新予定です)