印紙税は一見易しい税法のように思えますが、これがまた難しいです。
日本では易しい税法はない・・・というのが私の実感です。
税務の仕事に携わってもう20年以上なのですが、税務判断をするときには悩みに悩みます。
でも、悩んでいるのは税務署も同じようです。
例えば印紙税では「課税物件表」という表に印紙税を納めなければならない書類が例示されているのですが、どの文書に該当して税率がいくらなのか判断できないことが多々あります。
過去に、法人の税務調査で印紙税が問題になったことがあります。
調査官「先生(税務署の調査官は税理士を先生と呼びます)、この請負契約書を確認していただけますか?」
やけに自信ありげな様子です。
私「どこか問題ありますか?」
調査官「印紙が200円しか貼ってないんですよね」
私「あれっ、請負契約でも『変更契約書』は変更金額で印紙税額が決まるんですよね」
『変更契約書』とは、最初の請負契約書の請負金額を変更する契約書をいいます。
調査官「いえ、こういう契約書は新たに契約したことになるので請負金額が課税標準になります」
請負金額を確認すると当初の請負金額が6億円で、変更後の請負金額は5億5千万です。
変更契約書に該当する場合は、記載金額がない契約書で税額は200円。
新たな請負契約書の場合は20万円・・えらい違いです。
しかも似たような契約書が6通もでてきました。
印紙税法には過怠税というのがあって印紙が貼ってなかったり、貼った印紙の税額が不足していた場合は3倍のペナルティーを払うのが原則になっています。
無言で税額を計算してみます。
「20万円かける6通かける3倍で・・・360万円!!!!」
とんでもない税額になってしまいます。
しかも過怠税は法人税を計算するときの費用には認められません。
こりゃ大変だ、動揺を隠して答えます。
私「印紙税は税理士が修正申告するような税金ではありませんので、本当に本来の2号文書に該当するか、御署で結論を出していただけますか?」
調査官「わかりました。」
さて、どうしようか。とにかく、まず税務的に検討してみるしかありません。
(続く)
【今回の推薦本】
鳥飼重和著「豊潤なる企業−内部統制の真実」
日本能率協会の事業部長から「是非、読んでください」と推薦されて購入した本です。著者は税務訴訟の第一人者ともいえる弁護士の鳥飼氏。
この本の真髄は「第1章 〞明治?を創った一冊の書物とは」だと思います。
明治日本を創った名著は「西国立志編」であり、その基本精神は「天は自ら助くる者を助く」ということ、その精神が受け継がれた企業経営の本流なのだそうです。
「西国立志編」はサミュエル・スマイルズの「セルフ・ヘルプ(自助論)」を中村正直が翻訳したもので、「自助」の精神を陽明学が重視する「立志」と捉えて翻訳したものと考えられるそうです。
著者は「自助論」の最初の章に書いてある「自助の精神」を企業経営における内部統制に関する基本的かつ必須の精神である、と説きます。
(このブログは毎週木曜日に更新予定です)