会社法がもたらしたもの

オオコノハズク撮影YT氏

 どの書店にいっても売れ筋は会社法です。セミナーのDMを開くと会社法のオンパレードです。100年以上も運用されてきた商業の基本法を根本から変えてしまったわけですから無理もありません。

 神田秀樹さんの著書によると会社法制定の背景には、ファイナンスとガバナンスの大きな変化があるそうです。ファイナンスは自由化の流れであり、ガバナンスは規制強化の動きです。

 でも、会社法が中小企業にもたらしたものは、法人税法の改正による税務の混乱のようです。今回の改正は、役員報酬はすべて国税庁の管理課に置く。法人なりの税務的メリットは一切排除する、という改正になってしまいました。

 前者は役員報酬の改定に対する規制強化、後者は「特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入」という規定です。

 後者の制度は、役員報酬と利益の合計額が800万円を超えると、利益がゼロでも課税するという制度です。従来、個人事業が法人なりして有利になるのは年収800万円くらいといわれてました。そこで、この制度ができた訳です。

 会社法は企業を促すために資本金をいくらでもよくしたのですが、税務は企業するメリットをなくして逆に税収増を図っています。

「北風と太陽」という童話を思い出しますね。

【今回の推薦本】

 神田秀樹著「会社法入門」。著者は東京大学大学院教授、会社法の第一人者だと思います。流石、用語の定義や表現が厳密、という印象です。折に触れて会社法改正の背景や経緯を説明しており、広い視野で会社法を理解することができます。
「株式会社とは、資金を集めて事業を行うことをサポートするために法が用意した形態のひとつである。」素人には、こういう定義はなかなかできません。

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