関与したての若くて、優秀な経営者の方に損益を説明していると、よく指摘されることがあります。
「損益計算書に計上されている売上高は間違っている、私の把握している売上と全然違う」と仰るのです。
「じゃあ、社長はどのような資料で売上を把握しているのですか?」とお尋ねすると営業報告書の集計表や契約書の集計表を出されて、その月の受注合計や契約金額と一致していないのでおかしい・・という話になります。
会計慣行では、物の引渡やサービスの提供が終了した時点で売上を認識しますが、経営者は受注や成約で売上を管理しているため、認識にズレが生じてしまうわけです。
会計人としては、会計基準の説明を始めるところですが、私は偏屈な会計人なので、「そりゃ社長の仰る損益が正しい」と同調してしまいます。
会計上の売上を管理していても、今日、何をすべきか、さっぱり分かりません。経営者は受注ベースや契約ベースの損益で経営すべきだと思います。
ただ実際問題、請求書も出さない前に売上を計上するのは、かなり無理があるし、その売上に要する売上原価も確定していないことが多いため、正確な損益計算書を作成するのは不可能に近いので、商法や税法に準拠した財務諸表はどうしても必要です。と説明させていただいています。
【今回の推薦本】
永野護「敗戦真相記」。最近は昭和史に凝っています、この本は何ともいえぬ迫力と説得力があります。巻末の田勢康弘さん(日経論説委員)の『敗戦真相記を読む』がまたいいです。著者は渋沢栄一の秘書を経て東洋製油取締役、丸宏証券会長、岸内閣の運輸大臣などを歴任された方で、元・日本商工会議所会頭永野重雄さんの実兄にあたる方です。
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