とほほな確定申告

ツバメチドリ撮影YT氏

 税理士のくせに、いや税理士だから確定申告の時期は憂鬱になる。
 日本人は「確定申告」で税金を納めるという慣習がない。
 戦費調達のために始まった「源泉徴収制度」に慣れきってしまったためだ。
 確定申告は、本来は「納めるべき税金」を精算するだけの話の筈なのに、給与所得者は、どんなお金持ちも確定申告で「納付」になると納得してくれない。
 大半の方が、年末調整と確定申告は「お金を戻してくれる制度」だと思いこんでいるためだ。なんのことはない、もらう前に「税金を多く天引きされている」だけなのだが、天引きされるときには、あまり痛みを感じていない。
 日本人の納税意識が低いのは「源泉徴収制度のたまもの」といえる。
 源泉徴収で多額の税金を取られていてもあまり意識していないが、確定申告で納付になるときには納税の痛みを感じるわけだ。
 所得税の制度改正で最近注目されているのが「給付付き税額控除制度」という仕組みだ。
 詳しい内容は「またの機会」としたいが「世界一(これは悪い意味でも)の源泉徴収制度を誇る(?)日本じゃ、導入は難しい」というのが税実務に携わる私の実感だ。

【今回の推薦本】

 池尾和人・池田信夫著「なぜ世界は不況に陥ったのか」
副題は「集中講義・金融危機と経済学」ということで慶応大学大学経済学部教授の池尾和人さんの集中講義です。
 NHK出身の池田信夫上武大学教授と議論しながら今回の世界不況の構造を理論的にあぶり出してくれています。
第4講に「迂回生産の利益」という用語がでてきます。
「短い時間ですぐ成果が得られる投資案件や生産技術より、成果が得られるまでに長い時間がかかる投資案件や生産技術の方が生産性は高い」という理論です。
 投資家が短期的な利益を求めすぎた結果が「世界恐慌」だったわけです。
(このブログは毎週木曜日に更新予定です)