武田昌輔さんという大先生がいる。
職業会計人にはお馴染みの方だが、国税庁、大蔵省を経て現在は成蹊大学名誉教授。
税務会計研究学会の会長もされている。
私と同じ(?)中央大学を1944年に卒業されたということなので大正生まれの方なのだと思う。年齢や経歴から分かる通り、税法の生き字引のような方だ。
その武田さんがある専門誌に日本の税制の歴史について連載をされている。この連載が非常に面白い。課税庁の建前と本音がいかに違うか、赤裸々に語ってくれている。
こういう連載を読んでこそ、税法を深く理解できるというものだ。例えばこんなことを語ってくれている。
「昭和15年には支払った法人税を損金に算入しないこととされました。
現在は当然のように法人税を支払っても損金には算入しませんが、その始まりは昭和15年なのです。
当時の国会答弁などを読みますと“なぜ従来まで損金に算入したのに、今年度からは不算入なのか”という問いかけに対して“諸外国でも損金不算入だ”との答弁が繰り返されています。
都合がいい時は、“諸外国でも”が枕言葉になるわけです(笑)。
導入の背景を調べますと、損金算入で税金が大変減ってしまい、開き直りではないですが、不足分を賄うためにもっと税率を上げなければならなかったという事情が浮かび上がってきます」
私も含めて税理士は「税理論からいって法人税の損金不算入は当然なんです」なんて説明してますが、もともとは単に税収対策だったのですね・・。
【今回の推薦本】
川勝平太著「経済史入門」
川勝さんの本は、難解なので読みこなすのに苦労するのですが、この本は「入門書」なので平易に書いてくれています。
経済史は、なじみの薄い学問という感がありますが、文明の興亡を歴史的にとらえる導きの糸なのでそうです。
アダムスミスの「国富論」1776年
マルクスの「資本論」1867年
ケインズの「雇用・利子および貨幣の一般理論」1936年
シュンペーターの「景気循環論」1939年
と時系列に並べてみるだけで随分と長い時を経て、経済学が進化してきたことが実感できます。
でも完全な経済理論はありません。
カール・ポッパーは「反証することのできないような理論は科学的理論ではない」といったそうです。
なぜ反証することができるかというと現実が多様だからだそうです。
ところでマルクスの没した1883年年は奇しくもケインズとシュンペーター生誕の年にあたるそうです。それを知るだけで経済書の読み方が変わる気がします。
(このブログは毎週木曜日に更新予定です。でも来週は夏休み)