税理士市場と経済学

シマアジ撮影YT氏

 税理士は以前「広告は原則禁止」でした。「広告を解禁すると広告がうまく、商売主義の大規模な会計事務所が市場を独占するようになり品質が悪くなる」というのが建前だった気がします。 
まだ私が若かったころ、税理士の会合で「税理士のダイレクトマーケティング論」なんてのを話したら、業界の大先生たちから大顰蹙を買ったことがあります。 
ある先生は「もっと自分を強く持ちなさい」と私に懇々と説教しました。

「この業界はマーケティングを論じちゃいけないんだ」と身に染みました。ただ、なぜかホームページは「広告に該当しない」ことになっていました。

 現在は「税理士の広告は解禁」されたことになっています。「解禁されるとどーなるのかな〜」と思っていたのですが、税理士会が心配していたようにはなりませんでした。会計事務所のマスメディア広告はあんまり目にしません。

 意外にも広告が解禁されて活性化されたのは「税理士紹介業」の市場でした。(試しに「税理士 紹介」でググッテみてください)。今では税理士紹介業の大手だけでも20社以上あるとか・・。

 何で増えたかというと、「そこに市場があるから」ということに尽きると思います。つまり答えは単純「儲かるから」です。

よい税理士を捜しているお客様は星の数ほどいるし、優秀なのにお客様に出会えない税理士もたくさんいます。ただ、怪しいお客様も、専門知識が無くはったりだけの税理士も星の数ほどいます。(お前はどーなんだよ!と突っ込まないでくださいね)

 「さてどうするか」その解が「税理士紹介業」のようです
ここで税理士市場も経済学の根本的な問題を抱えていることが分かります。「市場メカニズムがきちんと働いていれば、適正価格で需要と均衡が釣り合う」はずなのに・・。

 アダム・スミス市場メカニズムを有名な「神の見えざる手」という言葉で表現しました。でも、この言葉は、「男女の出会い」「縁」「見えない赤い糸」というのにも似て、現実に悩んでいる人には無意味です。

 これをケインズは「長期的にはわれわれは死んでいる」(長い期間で考えれば経済学的に正しい結論に収束していく、という命題に対していった言葉)といったそうです。

 でも難しいのは、我々の職業はメーカーと違って「個人の専門能力が基本」で、それは大量生産できないことです。それが、さらに税理士紹介業を必要にしているのは皮肉でもあります。

 でも誤解しないでくださいね。わたしは税理士紹介業を否定的に考えているわけではありません。経済政策にケインズ経済学が欠かせないように、税理士紹介業も価値のある仕事だと思います。

【今回の推薦本】

 村山治著「市場検察」

 本書は、検察と大蔵権力の実態に迫った「特捜検察VS金融権力」の続編ともいえます。
著者は朝日新聞記者ですが、この人ほど司法の内幕に詳しいジャーナリストはいないと思います。

 金融や証券市場あるいは独禁法の適用強化による資本市場の自由化を進めて行くには、司法制度、検察改革が必要になる。本書を読むと、今日本が抱えている課題は、「明治以来、連綿と続いてきた官僚制度をいかに改革していくか」ということだと分かります。

 でも、とんでもなく難しいんだな、これは。

Amazon CAPTCHA

(このブログは毎週木曜日に更新予定です)