決算書ってなんだ?

フルマカモメ撮影YT氏

 社長や経理担当者から、次のような問い合わせがくることがあります。

「決算書を出すようにいわれたのですが、どの書類を出せばいいのでしょうか」

 あなたならどう答えますか?

 私も執筆した「新版 経理部」にも、他の会計の本にも、「決算書」という言葉が頻繁に出てきます。

 でも、よく考えてみると「決算書」という言葉は会社法や金融証券取引法の言葉ではありません。

 ためしに有斐閣の「税法用語辞典」や「法律用語辞典」で検索してみましたが、でてきません。

 日常会話では、社長が「おい決算書を出してくれ」といったり、銀行の担当者に「決算書のコピーをお願いします。」といわれます。

 でも、ここで出てくる決算書とは何を指しているのでしょうか?この答えは、結構難しいです。何故なら正解はないし、いっている人もよく分かっていないからです。

 経理が作成する書類はたくさんあります。

 「貸借対照表」や「損益計算書」が代表的なものですが、その他にも株主資本等変動計算書、個別注記表、法人税申告書、勘定科目内訳書、消費税申告書、都道府県民税、事業税申告書、市民税の申告書、事業報告、有価証券報告書・・・。

 どれとどれが決算書なのでしょうか?

 質問にはどう答えたらいいのでしょうか?

 「決算書では分かりません。会社法の計算書類のことなのか、金融証券取引法の財務諸表ことなのか、はてまた税金の申告書まで含むのか、その一部なのか確認してください。」

 この答えが正しいのでしょうか?

 でも、それじゃあお役所仕事です。

 そんな会計事務所、付き合いたくないですよね。

 答えはこんな感じです。

会計事務所「何のために決算書を出すのですか?」

お客様「ぼったくり銀行が融資の審査のために必要だといっているのですが」

会計事務所「ああ、それでしたら税務署に申告した書類一式がすべて必要だと思います。」

 実務はこうです。決算書は人によって違うのです。これでいいのだ。

 嬉しいことに「新版 経理部」が、またもや重版になるそうです。
出版から、ちょうど10年目・・あのころ僕は若かった(?)・・

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【今回の推薦本】

 田中弘著「不思議の国の会計学アメリカと日本」

 この本が出版されたのは2004年ですが、今だに売れてます。

 会計学の本は一般の人には理解しづらいはずなのに、ロングセラーになっているのは「国際会計基準の危険と矛盾」を分かりやすくと指摘している、数少ない本だからだと思います。

 筆者の警告にも関わらず、日本の会計制度は「時価主義会計」を全面的に受け入れてしまいました。もっとも、そうせざる得ないのが実情です。

 最近の会計監査は、「計上できる損失はなんでもかんでも計上」する傾向にあります。

 適正な期間損益計算という観点から考えると、ある意味で異常です。

 その始まりは時価主義会計でした。そして、とどのつまりは「意味不明の包括利益」です。

 今の流れを考えると、日本の公認会計士試験は、英語で行われるようになるそうです。必ずそうなるそうです。

 既に国際金融の世界では、もはや「契約書はすべて英文、根拠法は英米法、というのが既成事実としてすでに定着している」そうです。次は会計の世界。
 
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(このブログは毎週木曜日に更新予定です)