合併や分割、株式交換などを組織再編と総称しますが、組織再編の会計処理は2通りあります。
資産や負債の簿価を引き継ぐ「持分プーリング法」と、組織再編を会社の買収と考えて資産や負債を時価で評価し直す「パーチェス法」です。
日本では長らく「持分プーリング法」が主流でした。現在は基本的には「パーチェス法」なのですが一定の条件に該当する場合は、持分が継続しているとみなす「持分プーリング法」による会計処理が認められています。
ただ国際会計基準では「パーチェス法」しか認められていないので、2011年までに国際会計基準に合わせた会計基準に変更するそうです。
私は国際会計基準では、なぜ「パーチェス法」だけなのか理解できなかったのですが、牧野洋著「不思議の国のM&A」を読んでよく分かりました。
日本では昔から、お互いの面子を立てて「対等合併」を強調し、企業を買収するという形を嫌う傾向が強く、私の頭の中もその考え方で凝り固まっていたのですが、世界的には「マージャー(合併)」と「アクウィジション(買収)」の頭文字を取ったM&Aは、企業を売買することだそうです。(以下は同書の引用)
『商品を売買する市場で「買ってもいないし売ってもいないが、取引は成立した」が通用しないように、M&A市場でも「買ってもいないし売ってもいない」は通用しない。
その意味では必ずどちらかが買う側にあり、どちらかが買われる側にある。いかに当事者同士が「対等合併」を強調していても、実態は買収ということだ。
実態が買収であるならば、企業経営の実態を投資家に対して正確に伝える役割を担う会計制度も、合併を認めずにすべて買収として扱うようにしなければならない。
そうしなければ、商品の内容を不当表示して消費者をだますのと変わらなくなってしまうからだ』
経済環境は日本の経営者に意識の変革を求めています。法律や会計は世界的な常識を先取りして改正されていきます。
この先、どうなることでしょうか、今さら鎖国も尊王攘夷運動もできないしな〜。
【今回の推薦本】
ということで牧野洋著「不思議の国のM&A」。著者は2007年5月まで日本経済新聞の編集委員だったそうです。
(このブログは毎週木曜日に更新予定です)