ある会社の社長と企画室長の会話です。
社長「例のMA(買収)の件、室長は、買うとしたらいくらだと思う?」
室長「純資産価値の5億に営業権というところでしょうか・・。」
社長「営業権の算定は、どう考える?」
室長「そうですね・・。予想経常利益の3年分を市場利子率5%でディスカウントして2億円というところでしょうか・・・。」
社長「それは違うと思うな、あの業界は製品のライフサイクルが極端に短いからリスクプレミアムをかなり高く見ないと失敗すると思うよ・・。」
室長「う〜ん。確かに仰るとおりかもしれません・・。」
現在投資して、将来得られるであろう利益を現在価値に置き換えて考えることをディスカウント・キャッシュ・フロー(割引現在価値)といいます。
初心者向けの説明では、よく次のように説明されます。
その投資を別の方法で運用したら、10%の利率で運用できるとしたら、将来得られる利益は1.1で割り戻した価値が現在価値である。
しかし私は、実務で大切なのは、割引現在価値を算出する前に、将来の予測自体の精度をどう考えるのかが重要だと思っています。
産業や市場は絶えず変化します。
その可能性を織り込むことをリスクプレミアムといいます。
将来予測が難しい事業はリスクプレミアムを高く見るべきです。
その資源を得られることで、逆に予想よりもたくさん利益を得られる自信があるなら、ディスカウントせずにプレミアムをもっと低く設定してもいい訳です。
【今回の推薦本】
水木揚「誠心誠意、嘘をつく」。現在の自民党を創り上げた政治家三木武吉の物語です。名著「小説 吉田学校」では、吉田首相に敵対する三木武吉が実に活き活きと描かれていました。この作品もなかなかです。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532165245/qid%3D1127691727/250-5323255-0405837
(このブログは毎週木曜日に更新予定です)